内的注意と内的行動について

Q:内的注意と内的行動について具体的に教えて下さい。

A:内的行動とは、私たちの視覚化、イマジネーション、考えを使って行動する事です。

何故内的かというと、視覚化、イマジネーション、考えは全て私たちの意識の中で起こる事だからです。但し、それが「行動」と呼ばれる為には必ず「目的」を伴う必要があります。

私たちが何の為に視覚化やイマジネーション、考えや形象を生み出しているかを理解していれば、それは『内的行動』になります。それらが単なるカオスだった場合は、どれだけ内部にイマジネーションがあろうが視覚化があろうが『内的行動』とは呼べないのです。

普段私たちの頭の中には常にいろんな考えが流れては消え、混沌としています。それによって、私たちの意識の成長は邪魔されています。私たちは内部の混沌から解放されなければならないのですが、その為にも明確な「目的」の助けが必要になるのです。目的がなければ意識は常にあちこちに飛んで行ってしまいます。

もう一度言いますが、『内的行動』において重要な事は目的です。何の為に?何の課題を持ってこの行動をするのか?という事ですね。

内的注意とは、人間が持っている能力で、それは、別の空間で起こっている事柄を感じたり、感覚でとらえられるという能力です。

マイケル・チェーホフはこういう例を挙げています。人が恋に落ちている時、その人間が何をやっていようと好きな人への繋がりが切れる事はないですよね。

つまり、この人の内的注意は常に好きな人の方に向かっているという事です。離れていても好きな人を良く感じ、捉えているのです。それは、母親が子供にもつ感覚と同じですね。

私たちの外的な注意以外に、人間の意識が出来るユニークな事がこの内的注意なのです。

見えないものとの繋がりとでもいえばいいでしょうか。

もしかするとこれは、100年前から量子論の中で言われている『世界の非局所化』と関係があるかも知れません。つまり我々が世界全体と繋がているという事です。

内的注意はこの人間の能力と深いつながりがあると思います。

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人間はこの能力を授かって生まれてきていますが、なかなか普段使っていません。

人生のある特別な瞬間、例えば恋に落ちた時、または誰かについて心配になった時にこの能力が発揮されます。つまり、特別な誰か、事柄と結びついた瞬間に内的注意が強く働くのですね。

日常ではなかなか使いませんが、芸術家はこの能力を使います。内的注意なしには絵画も音楽も生まれようがありません。

マイケル・チェーホフは、興味深い事を言っています。『私たちは、内的注意の助けをかりて実際には見たこともない想像上の形象と交流することが出来る』と。古代の芸術家はこのい事をよくわかっていました。偉大な芸術家たちは内的注意の力で形象を見て、捉えようとしていたわけです。それが見えて初めて絵画として描く事が出来たのです。

何年もその形象が内部に現れるのを待ち続けた芸術家もいます。

内的注意は、この3次元の世界との交流だけではなく多次元の世界との交流の能力を育ててくれるのです。

スタニスラフスキーは、俳優は第三の存在を生み出すと言います。俳優自身と作家が描いた形象(イメージ上の人物)が融合された時に生まれるのが第三の新しい存在です。

我々が作り出すそのような第3の存在も多次元世界に生き続けます。また、私たち人間もこの3次元の世界だけに生きているのではなく、多次元に住んでいます。私たちの感情、考えは3次元ではなく違う次元に生きていますよね。

内的注意は、この多次元世界に生きる様々な存在、形象との交流を可能にしてくれるのです。

そこまでいけば、本当の芸術、高次元の創造と呼ぶことができるでしょう。