創造的な、クリエイティブな自己感覚を作ることが大切です。 自己感覚は、言ってみればいい状態か悪い状態しかありません。 悪い方というのは、俳優的自己感覚の状態です。これはなかなか拭いきれません。 実際やってみて皆さんも体験すると思いますが、どうしても舞台に出て、人前に出た瞬間に「俳優的自己感覚」「あ、見られている」という感覚になってしまいます。 そうするとすぐに緊張します。ずっと見られているので、見られているという感覚がどうしても取れません。
言ってみれば、ここで学ぶことの全ては、いかにその俳優的な見られているという感覚から、人間的な、ごく自然な、創造的自己感覚になっていくかという、そこの勉強だけです。
人によって、その感覚に数年でなれる人もいれば、3、4年かかる人もいれば、10年ぐらいかかる人もいます。 これもロシアだけじゃなくて、アメリカでもヨーロッパでも日本でも、ずっと仕事してきて、いろんな俳優を見てきましたが、どんなにベテランの経験豊富な俳優でも、やはり見られているという俳優的自己感覚がどうしても取れないという人が多いです。
それでどうしても誤魔化してしまいます。どこかで自分に嘘をついてしまう。 それでとにかく、やってるというのを見せつけようとします。ただどんなにやっても、そういうことは役立ちません。
なぜかというと、創造的なクリエイティブなプロセスというのは、俳優的な感覚のうちは起こらないからです。 そこで一番最初に大きな問題になるのは、注意が集中できなくなることです。
お客さんのことを考えたくないのに、でもやっぱり客のことを考えてしまう。 お客さんのことを考えない、考えないとやってるのに、でもやっぱり気になってしまう。 演出家が客席にいるって考えただけで、演出家は一人なのに、気にしてしまう。
そこが一番問題なわけです。 俳優の経験がある方は身に覚えがあると思います。 それでどんなに誤魔化そうとしても無理です。
一人一人自分のペースがありますが、やはり自分の意識を変えて、自然体の創造的な自己感覚になっていくということを目指していかなければなりません。 結局は自分の意識の問題です。 自分の意識が自分の人生そのものです。 自分の意識がとらえていないものは、自分の人生で出会ってこなかったことと同じです。 全ては意識です。